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パンタナール

概要


パンタナール大湿原(約14万平方km、雨期は23万平方km)は、南米大陸中央部をブラジル・ボリビア・パラグアイにまたがって拡がる海抜高度80mから150mの広大なくぼ地であり、その領域の大部分はブラジル領(マットグロッソドスール州域65%、マットグロッソ州域35%)に位置しています。

※北海道の面積7万8千平方km、本州面積22万8千平方km


パンタナールの南北を流れる主要河川パラグアイ河(全長2,621km、うちブラジル国内1,683km)は、北から南へ1km当り1-2cmの傾斜しかないことに加えて、東西に広がるその支流網も東から西へ1km当り40cmほどの傾斜しかありません。そのため、パンタナール周辺に降り注いだ雨水はその領域内を網羅する支流から数ヶ月かけてゆっくりとパラグアイ河に吸収されます。それと同時並行で数ヶ月から半年をかけてパラグアイ河の水流はゆっくりゆっくりと南へと流れていきます。このように、南米大陸中央部に降り注いだ雨水の受け皿のような役割を果たすことで広大な湿原を形成しているのがパンタナールなのです。(パンタナールPantanaは、ポルトガル語で「大湿原」という意味。*pântanoは「湿原」の意)

パンタナールは、一年周期でゆるやかに展開するその水位の増減をもって、膨大な種類と量の魚類を育み、その無数の魚たちが無数の鳥類を惹きつけるといった具合で、地球上まれに見る生命の楽園を形成しています。パンタナールでまず目に入ってくるのは、「鳥の楽園」としての姿でしょう。そして、釣りをすれば、魚類の宝庫であることも分かり、その奥地に踏み入るなら、数千万匹いるといわれるワニや、げっ歯類最大の珍獣カピバラ、大きいものでは8mにもなるというアナコンダ(スクリ)に代表される蛇たち、その他、数多くの動物を目にすることができます。

このパンタナールの膨大な生態系に関心が持たれるようになったのは、まだ1970年代に入ってからのことで、ブラジル国営研究機関Embrapaパンタナール研究所(マットグロッソドスール州コルンバ市)が1975年の創設以来進めてきた研究調査の結果、今日までに、鳥類665種、魚類262種、ほ乳類95種、は虫類162種、両生類40種の動物と約2千種の植物の存在が確認されています。今日、パンタナールは地球上に現存する最も大きな野生生態系の一つとして、ユネスコの世界遺産・自然遺産リストに登録されています(2000年)

「パンタナール保全地域」として世界遺産に登録されているのは、ボリビア国境沿いにあるブラジル国立パンタナールマットグロッソ自然公園を中心とする領域187,818ha(マットグロッソ州とマットグロッソドスール州の州境に位置)で、パンタナール湿原全域の約1.3%に相当します。

豊かに生命を育むという点でアマゾン流域と共通する面も多いパンタナール。生い茂った密林地帯であるアマゾンに比べて、湿原型であるパンタナールは、野生動物の観察が容易であることが特長であり、90年代に入ってからはエコツーリズムが急成長しています。

また、小さいながらも獰猛さで有名なピラニアから体長150cm、体重100キロにもなる巨大なジャウー、黄金に光るドラードなどバラエティ豊富な漁場でもあるパンタナールは南米有数の釣り場としても知られています。80年代に始まって以来毎年、禁漁期(11月から2月)に入る直前の時期に開催されている国際釣り大会(北はカセレス、南はコルンバで開催)は、世界各国から集う釣り愛好家たちで賑わいます。





パンタナールの領域区分

パラグアイ河は、ブラジル・マットグロッソ州のパレシス高原(Chapada dos Parecis)に端を発し、ブラジル・マットグロッソドスール州、パラグアイ国内を経由して、ブラジル、パラグアイ、アルゼンチンの国境をなすパラナ河に合流します。その主な支流としては北から南にかけてRio Jaurú, Rio Cuiabá, Rio Itiquira, Rio São Lourenço, Rio Taquari, Rio Negro, Rio Aquidauana, Rio Miranda, Rio Jacadigoなどがあります。ブラジルの国営研究機関Embrapaパンタナール研究所(1975年創立、マットグロッソドスール州コルンバ市)は、ブラジル領内のパンタナールをその地質と気候の差異から11の領域(Cáceres, Poconé, Barão de Melgaço, Paraguai, Paiaguás, Nhecolâncdia, Abobral, Aquidauana, Miranda, Nabileque, Porto Murtinho)に区分しています(区分地図)。

なお、パラグアイ河沿いの主要港としては、北にカセレス(海抜高度118m、2005年7月現在の人口89,054人)、690km南下した中央にコルンバ(海抜高度118m、2005年7月現在100,268人)、さらに520km南下してポルトムルティーニョ(90m、13,634人)があります。

パンタナールの気候と増減水期

パンタナールの気候は、熱帯サバナ気候に属し、雨季(10月〜3月もしくは4月)と乾季(それ以外の時期)に大別されます。パンタナールでも、特に暑さの厳しい北のクイアバ、南のコルンバの両市は、夏期のUV指数は13,14にまで達する世界有数の日差しの強い都市であり、夏季の天気の良い日の最高気温は恒常的に35度を超え、40度を超えることもあります(体感最高気温では38-45度)。一方、冬季は寒暖の差が激しく、寒波の到来時には、最低気温が5度以下に低下することもあります。


コルンバの気象データ(1975-1996年の統計値)
年間:平均最高気温30.6度、平均最低気温21.0度、平均気温25.1度、年間降雨量1070.5mm
夏(10月-3月):平均最高気温32.7度、平均最低気温23.0度、平均気温27.0度、月間平均降雨量136.4mm
冬(6-7月):平均最高気温26.7度、平均最低気温17.4度、平均気温21.5度、月間平均降雨量22.5mm

パンタナールの増減水期
      北部:カセレス港の増水ピーク2-3月、減水ピーク7月。
      中東部ミランダ地方:ミランダ川の増水ピークは2月。
      中央部:コルンバ・ラダーリオ港の増水ピークは5-6月、減水ピーク12-1月。
      南部:ポルトムルティーニョ港の増水ピーク7-8月、減水ピーク2-3月。

パンタナール中央部コルンバ・ラダーリオ港の場合、パラグアイ河の水位は、年を通じて、おおよそ1mから5mの範囲内で推移します。パラグアイ河の現在の水位を知るにはこちら

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パンタナール航空写真

ガイドとして、コルンバからサンタクルースに行って来たときに撮影した航空写真です。ボリビア側はブラジル側に比べて湿地帯というよりも大森林という感じでした。ブラジル側であればもっと湿地帯らしい写真が撮れるのですが。。 (クリックで画像拡大)



パンタナールリンク

(原則ポルトガル語サイト)

ブラジル国営研究機関のサイト。パンタナールに関する様々な研究データをもっている。
アマゾン河と並ぶ重要な水路としてパラグアイ河の情報がアップされています。
パンタナール全般にわたる情報を網羅するサイト。
パラグアイ河を運行する水運会社のサイト。
ブラジルの国営電力会社ANEELのサイト内のパラグライ河情報のページ。
ユネスコ世界遺産センターによるパンタナール保全地域に関する記述。(英語)
国連環境計画UNEP世界保全監視センターのサイト。世界遺産パンタナール保全地域の紹介(英語)
在米NPO湿地研究所のサイト。パンタナール全般に関する情報が英語で得られます。
「数百万匹!魚たちの大移動 水の楽園パンタナール」(2002年4月1日放送)と「水の魔法が生きものを呼ぶ 世界最大の湿原パンタナール」(2002年11月4日放送)はともに、貴重な映像でもって生命の楽園パンタナールのふしぎを解き明かした秀逸な作品でした。

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